【英語で聞く自伝】世界をだました男:Catch me if you can(フランク・アバグネイル)

英語で収録されているYouTubeのなかから、勉強になりそうなムービーを紹介していく。

今回は、トム・ハンクス、レオナルド・デカプリオ主演のCatch me if you canという映画のモデルになった、いわば天才的詐欺師、アバグネイル氏のGoogleでの講演。元詐欺師でありながら、現在はFBI捜査官として働いている。

youtu.be

映画の予告編はこちら

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講演の語り出しは、両親の離婚がきっかけで家を出て、16歳にして経済的に自立しなければいけない状況に陥ったときの回想から始まる。預金がないので、不渡りになるような小切手を振り出すことでなんとかお金を手に入れるも、ほどなく警察に追われることになる。当時いたニューヨークから逃げなければと思っているところに、偶然ホテルの前で航空会社のパイロットや職員をみかけたのをきっかけに、航空会社に入り込んで、タダで各地に逃亡することを思いつくのだった。

ハイライト

  • 偽の制服とIDカードをつくってパイロットになりすますことに成功。様々な会社の飛行機に乗り込んで、世界中をタダで旅した。しかも旅先で、航空会社の負担でホテルにも泊まったし、航空会社の社員としての制度を利用してあらゆるところで小切手を現金化することもできた。(5:53)
  • やがて、21歳のときにフランスで逮捕された。スウェーデン警察から出たインターポールの逮捕状によってだ。フランス、スウェーデンで服役したのち、アメリカに送還されて、12年の懲役を言い渡された。ところが、4年経ったときに、FBIに取引を持ちかけられ、応じることとなった。それは、釈放するかわりに、刑期の間はFBIのために働くことだった。刑期後も勤務をつづけ、今まで41年間FBIに勤めている。(16:36)
  • (質疑応答にて)Q.詐欺師だったときに、その自信はどこから出てきていたのか? A.若さゆえのことで、捕まることも怖くなかったし、ただ単に向こう見ずだった。私のすべての詐欺の手口は、なりゆきから偶然思いついていったもので、計画したものではない。そもそも、自分のやっていることを信じるならば、他人がどう思うかは関係ない。自分を疑い始めた瞬間、それは他人にも見えて、弱みになる。だから自信はもっていなければならない。(28:08)
  • 最後に、パスワードによる個人認証はすぐになくなるだろう。パスワードはサイバー犯罪の温床である。銀行では、パスワードがあることで大変なコストがかかっている。似た意味で、社会保障番号もなくなるだろう。これらにかわって、CIAですでに実用になっている認証システムがこれからは民間で主力になる。(56:37)

講演での詐欺師としての自伝を語るときは、50年まえにもかかわらず、まるでその時のシーンが目に浮かんでくるくらい臨場感がある。当時の話はとうとうと途切れることがなく、下のメモに目を落とすこともない。おそらくアバグネイル氏の目の前にあるのは、そのときの出来事が起こったときの鮮明な視覚的イメージなのだろう。

あらゆる虚偽の身分を他人に信じ込ませることを完璧にやってのけた人だが、現在の話し方を見てもそれは納得できる。瞬時にストーリーを紡ぎ出す話しかた、自然に溢れ出る自信といったものに悪い動機が加われば、昔の姿も想像にかたくない。

なお、詐欺師としての生活からはじまった講演も、最後は家族に対しての思いを語ることで締めくくられる。いまは独立している3人の子供のことを話すときや、奥さんのことを話すときはとても誇らしげだ。